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ICT教育とは?メリット・デメリットと注目される背景を解説
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ICT教育とは?メリット・デメリットと注目される背景を解説

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インターネットの普及に伴うデジタル化の波は、暮らしの在り方を変えました。現代の子供たちは、膨大な情報の中から必要なものを取捨選択して活用する「情報活用能力」を鍛え、これからの社会に主体的に対応していかなければなりません。

ここでは、未来を生きる子供たちのデジタル基盤を育てる、ICT教育について解説します。

ICT教育とは情報通信技術を利用した取り組みのこと

ICT教育とは情報通信技術を利用した取り組みのこと

ICTは、Information and Communication Technologyの略で、パソコンやタブレット、モバイル端末などの情報通信技術を利用した取り組みのことです。つまり、ICT教育は「情報通信技術を活用した教育の手法」ということができます。

文部科学省では、2011年に公表した「教育の情報化ビジョン」のひとつにICTの積極的な活用を掲げました。この教育の情報化とは、下記の3つの側面から教育の質の向上を目指すものです。

<教育の情報化ビジョン>

・子供たちの情報活用能力の育成

・教科指導における情報通信技術の活用(情報通信技術を効果的に活用した、わかりやすく深まる授業の実現など)

文部科学省は、教育の情報化を実現するにあたって核となるのがICTの活用であり、「学校におけるICT環境は、(中略)鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なもの」であるとしています。

では、どのような授業がICTを活用した教育に該当するのでしょうか。具体的には、下記のようなものが挙げられます。

<ICTを活用した授業の例>

・紙の教科書の代わりに、パソコンやタブレットで電子教科書を使用する

・ICT機器を使って図形を拡大したり、立体的に見せたりして、生徒の理解を深める

・授業に動画を取り入れ、わかりやすく説明する

・生徒がデジタルコンテンツを活用して疑問点を調べる

・生徒一人ひとりの理解度やつまずきの状況に応じて、デジタルコンテンツで課題を与える

文部科学省が2019年に発表した、全国の小・中学生全員に1人1台の端末の支給と、高速大容量通信ネットワークの整備を軸とした「GIGAスクール構想」。2020年に新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言で全国一斉休校になり、宣言解除後も対面での授業が制限されたことから、一気にその動きが加速し、当初の予定より前倒しで進められました。2021年8月時点で、ほとんどの小・中学校で端末を活用できる環境が整っています。

ICT教育のメリット

小学校のICT教育 授業風景

新型コロナウイルス感染症の流行が思わぬ後押しになったことを差し引いても、教育現場でICTの活用は積極的に推進されています。その理由は、教員と生徒の双方に多くのメリットがあるからです。具体的には、下記のようなメリットが挙げられます。

授業がわかりやすくなる

ICTを活用すると、板書やプリントではできなかったさまざまな表現が可能になり、多角的に生徒にアプローチできるようになります。
例えば、これまで教科書の平面の図を見ながら教員が説明していた数学の図形問題も、ICT機器を活用することで立体的に見せることが可能に。生徒は直観的に問題を把握できるようになり、理解が進みます。テキストや写真に加えて音楽や動画などを利用することで、生徒が主体的に楽しみながら授業に取り組むようになる効果も期待できるでしょう。
生徒の思考力やチームワークをはぐくむ協働学習や、理解度に合わせた個別学習など、授業の形を柔軟に変えられるのもメリットです。

授業が効率的になる

これまで、教員は多くの時間を授業やテストの準備、答案の丸つけといった事務作業にさいてきました。授業を行うために必要な時間とコストがあまりに多く、長時間労働にならざるをえないことから、教員のなり手が減っていくことも懸念されています。
ICTを活用することで、当たり前に行われてきた授業用のプリントや小テストなど配布物などの紙媒体の代わりに、パソコンで作成して共有することで、印刷や配布の手間を省くこともできます。丸つけも格段と楽になり、教員の負荷を軽減することができるでしょう。

場所の制約なしに授業が行える

新型コロナウイルス感染症の影響で自宅学習を余儀なくされた際には、ICTを活用したオンライン授業が積極的に行われました。このように、必ずしも学校に行かなくても、学校と同じ授業が受けられるのは、ICT化の大きなメリットです。今後、災害や感染症の流行などで通常の学習が困難になった場合も、ICT環境があれば学習を継続することができます。

生徒のITリテラシーの育成ができる

急速に進む情報化社会においては、正しい情報を正しく読み解き、正しく活用するITリテラシーが問われます。 ネット上にあふれる膨大な情報の中には、真偽不明の情報も少なくありません。授業で多くの情報にふれ、必要な情報を取捨選択する力をはぐくむことで、デマや不確かな情報に惑わされることなくITを活用する力が身につきます。

教員間の情報共有が容易になる

従来、休み時間や放課後に時間をやりくりして行われていた教員間の情報共有も、ICTならスムーズに行えます。授業の資料や課題なども簡単に共有でき、時間を有効に使うことが可能です。

ICT教育の課題

ICT教育の課題

ICT教育にはメリットが多くありますが、解決すべき課題も少なくありません。ここからは、ICT教育の課題について見ていきましょう。

端末の購入にあたり、費用負担がある

ICT教育に必要な環境を構築するには、下記のようにさまざまなものを導入する必要があり、コストがかかります。

・パソコン、タブレット、電子黒板、プロジェクター、デジタルカメラなどのツール

・校内LANなどの通信環境の整備

ざっと挙げただけでも、それなりの金額になることがわかります。加えて、端末が故障したり破損したりした場合は修理費、新規購入費がかかるため、学校側の負担は軽いとはいえません。

ICT機器が苦手な教員の負担になる可能性がある

ICTをうまく活用できれば教員の負担軽減になりますが、パソコンやタブレットなどを普段から使用していない教員にとっては、反対に大きな負担になる可能性があります。使用方法に慣れるまでは、授業がスムーズに進まなかったり、トラブルで混乱したりすることも考えられます。

通信環境の影響を受ける

通信環境が悪いと、授業がスムーズに行えません。たくさんの生徒が一度に使うことを考慮して環境を構築しましょう。導入後のサポート体制がしっかりしている機器を選ぶことも大切です。

ICT教育を何のために行うのか、どのように活用すべきかわからない

教員にとって、ICTを導入することや使うことが目的になってしまうと、そもそもの導入目的がわからないまま義務として利用することになり、ICTのメリットを十分に享受することができません。ICTを使って生徒に提供したい体験や、解決したい教員の課題を学校内で話し合い、ツールとして上手に活用する必要があります。

ICT教育の課題解決のために必要なこと

ICT教育の課題解決のために必要なこと

ICT教育をさらに推進するために、前述した課題に対する解決策を検討していかなくてはなりません。実行されている施策の中から、代表的なものを2つご紹介します。

端末の購入にかかる費用を国が負担

義務教育期間中の生徒に対し、1人1台の端末と高速大容量の通信環境を提供してICTを活用するGIGAスクール構想では、国が用途を限定した補助金を交付し、導入が進んでいます。端末の導入にあたっては、国からリース業者に対して、1台あたり4万5,000円を上限として補助を行います。
ただし、付随する消耗品や備品、故障対応、有償ソフトウェアについては支援の対象外であり、引き続き状況を注視していく必要がありそうです。

教員のICT活用のために自治体や企業と連携

端末の配備が終わり、デジタル教科書が普及する今後の教育現場の変化を見据え、教員が端末やソフトウェアを活用するためのトレーニングを自治体や企業と連携して進める動きも顕著です。教員のICT活用指導力が向上することで、下記のような展開が期待できます。

・ICT機器を活用した教材や資料の映写

図形の移動や回転ができるデジタル教材や、電子教科書をデジタル黒板に映し、生徒の理解を深めたり、生徒の視線を上げて集中させたりすることができます。

・授業内容を簡単にまとめ、振り返ることができる

生徒が発表した資料や発言、授業内容などを映像や動画で保存し、必要に応じて振り返りに使えます。

・教員研修や校内研究での活用

優れた授業や新人教員の授業などを動画に残し、後から共有することで、教員の研修や校内研究に活用できます。授業時間をさいて見学する必要がないので時間を有効に使えるほか、必要な個所を何度も見返すことができるのもメリットです。

・採点業務の効率化

毎日のように行う小テストや宿題の採点は、教員にとって大きな負担です。ICTを活用したテストを導入することで、丸つけを自動化し、翌日の授業で使う教材研究など、よりクリエイティブな作業に時間をさくことができます。

教員教育を含めたICT活用の指針が重要

ICT教育が普及する背景やメリット、デメリットについてご紹介しました。まだまだ発展途上ではあるものの、国内のICT教育は着実に浸透しつつあります。
今後は、ICTを活用することによって得られる教員側、生徒側のメリットを余さず得ることができるよう、教員教育を含めた基盤づくりを進めていくことが大切です。1人1台の端末を有効利用した学びの最適化は、今後の学校教育における最重要課題だといえるでしょう。

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